社内に響く、冷たい水音。
それは、アザラシ係長が会議室の床を滑って移動する音だった。
「本日付で、福井水族館への出張を命ずる」
部長アシカの一声で、係長のスケジュールは一瞬で埋まった。
「視察目的は?」
「クラゲ展示の構成と、イルカショーの演出参考だ」
「了解しました。ついでにソースカツ丼の厚み調査も入れておきます」
係長は静かにうなずき、社内の水槽前で深呼吸をした。
「水族館…それは我々のルーツ。出張という名の帰省かもしれませんね」
🚄 出張の朝、ペンギン新人ははしゃぐ
同行するのは、入社3ヶ月のペンギン新人。
「係長〜!新幹線って、氷の上より速いんですか?」
「君はまず、座席でアイスをこぼさない訓練をしなさい」
守山駅から米原経由で福井へ。
車窓から見える田園風景に、係長は静かに目を細める。
「この景色、社内のリラクゼーションルームに導入したいですね」
ペンギン新人は、駅弁のカニ飯に夢中。
「このカニ、社食に出ませんかね?」
「予算が通ればな」
途中、車内アナウンスに反応してペンギン新人が立ち上がる。
「係長!“次は福井”って言ってます!出張先が呼んでます!」
「君はまず、座って呼ばれなさい」
🐠 福井水族館、潜入レポート
到着したのは、福井の人気水族館。
クラゲ展示は幻想的で、係長は思わず水槽に顔を突っ込む。
「この照明、会議室にも欲しいですね」
「係長、それは水槽です」
イルカショーでは、演出のタイミングをメモ。
「ジャンプの瞬間にBGMを切るのは、緊張感を高める演出ですね」
ペンギン新人は、イルカに手を振りながら「同期になりたい」とつぶやく。
館内の売店では、カワウソ課長(別部署)が偶然遭遇。
「おっ、君たちも出張か。俺はグッズ調査だ」
手にはすでに10点以上のぬいぐるみ。
「課長、それ全部経費ですか?」
「いや、俺の癒し費だ」
係長は水槽の構造に見入る。
「この曲線美、社内の会議室に応用できるかもしれません」
「係長、それは社員が迷子になります」
🐚 館内の裏側へ
特別に許可を得て、バックヤードも見学。
ペンギン新人は、餌の冷蔵庫に興味津々。
「係長、ここに住めますね」
「君はまず、冷蔵庫に入らない訓練をしなさい」
飼育員(人間)との会話では、係長が真剣な表情で質問を重ねる。
「クラゲの展示は、照明と水流のバランスが鍵ですか?」
「ええ、あと“揺らぎ”ですね」
「揺らぎ…それは社内にも必要かもしれません」
ペンギン新人は、イルカの餌を見て「これ、社食に…」と言いかけて係長に止められる。
「君はまず、イルカと同じ食生活に耐えられるか考えなさい」
🍽 ご当地グルメ調査
昼食は、福井名物・ソースカツ丼。
「この厚み、社食のカツとは別次元ですね」
「係長、カツの厚さで昇進は決まりませんよ」
その後、越前ガニの看板を見つけて立ち止まる。
「これ、冬のボーナスで買えるかな」
「係長、それは夢です」
ペンギン新人は、地元のスーパーで“へしこ”を発見。
「係長、これって魚の漬物ですよね?社内の冷蔵庫に入れてもいいですか?」
「君はまず、社内の空気を守る訓練をしなさい」
🧳 お土産&帰路
帰りの電車では、ペンギン新人がぬいぐるみを抱えて爆睡。
係長は静かに報告書をまとめる。
「出張とは、情報収集だけでなく、心の整理でもある」
「水族館の静けさは、社内の騒がしさを見直すきっかけになるかもしれない」
カワウソ課長からはメッセージが届く。
「グッズ、あと3点買った。癒しが増えた」
係長は「課長の癒し費、社内で議論が必要だな」とつぶやいた。
📄 出張報告書(抜粋)

件名:福井水族館視察報告
提出者:アザラシ係長
同行者:ペンギン新人(アイスこぼし担当)
目的:クラゲ展示の構成参考、イルカ演出の分析
副目的:ソースカツ丼の厚み調査、グッズ爆買い、癒し空間の構造研究
所感:水族館は癒し。出張は浪漫。カニは高級。新人は騒がしい。

